離婚原因-不貞行為

法律上、離婚原因として、

1.配偶者に不貞行為があった場合
2.配偶者から悪意で遺棄された場合
3.配偶者の生死が3年以上不明である場合
4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない場合
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由がある場合

とされています。

(1)「不貞行為」とは、一般に配偶者以外の者と性的関係を持つことを意味します。不倫、浮気と言われるような、特定の異性と継続的な関係を持つ場合は、当然「不貞行為」に該当します。

では、一回きりの関係を持ったような場合にも「不貞行為」になるのでしょうか?「不貞行為」の国語的な意味からすると、結婚して家庭を築いている以上、不貞行為であること自体は否定できそうもありません。

しかし、行きずりの恋であったり風俗に行ったなどの過ちが一度あっただけで、無条件に離婚原因となるかは疑問です。そのような場合は、他の事情を併せて、(5)その他婚姻を継続し難い重大な事由がある場合に該当するときに、離婚原因が認められると考えられます。

よくあるのは、一回きりの浮気がばれて、これが切っ掛けで、夫婦喧嘩が絶えなくなったり、相手を生理的に嫌悪するようになってしまい、婚姻の継続が困難になってしまうケースです。

有責配偶者からの離婚請求

有責配偶者とは、不貞行為をした側の配偶者を意味します。かつて、裁判所は、有責配偶者からの離婚請求を、道徳的観点から認めていませんでした。しかし、昭和62年の最高裁判例により、以下の要件のもと、有責配偶者からの離婚請求も認められるようになりました。

1.夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及んでいること
2.夫婦間に未成熟子が存在しないこと
3.相手方配偶者が、離婚により社会的、精神的、経済的に過酷な状況に置かれないこと

現在では、昭和62年の最高裁判例を原則としつつも、より緩やかに有責配偶者からの離婚請求を認容している裁判例も見られます。例えば、

  1. 夫婦の別居期間は、かつて相当長期間を要するものとされていましたが、近時の裁判例では、6年の別居期間で有責配偶者からの離婚請求を認めた事案もあります。
  2. 未成熟子とは、未成年の子供と考えて結構ですが、通常は、高校生程度までの子供を意味します。未成熟子がいる場合は、子の福祉という観点から、未成熟子がいない夫婦間での離婚に比べて、離婚請求が認められにくい傾向があります。
    もっとも、未成熟子がいたとしても、小学生と高校生とでは成熟度や離婚によって子に与える影響は大きな違いがありますし、金銭面その他の方法で、未成熟子にマイナスが生じないならば、離婚請求が認められるケースもあります。
    未成熟子を取り巻く具体的な事情によるところですが、年齢の低い未成熟子がいる場合は、やはり離婚は難しいといえるでしょう。
  3. 「相手方配偶者が、離婚により社会的、精神的、経済的に過酷な状況に置かれないこと」という条件は、基本的に、慰謝料や財産分与等によって解決される問題ですので、有責配偶者からの離婚請求の可否にあたっては、大きなウエイトを占めるものではないと思われます。
    しかし、実際問題としては、相当の金銭的給付をすることが、有責配偶者からの離婚請求を認める前提条件となると解さざるを得ません。

有責配偶者からの離婚請求の可否については、上記のような各要素を具体的に検討して判断が下されます。昔ほどは、離婚請求は難しくなくなってはきておりますが、やはり離婚が認められるケースは少ないという前提で、考えた方がよろしいかと思います。

離婚原因-暴力

配偶者が暴力を振るうことを離婚原因として、離婚調停や離婚裁判を行うケースは、多く見られます。民法上は、暴力行為が離婚原因であるとは規定されていないのですが、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」(民法770条1項5号)に該当するものとして、他の離婚原因の有無と併せて主張されます。

ここでは、暴力行為についてのみ検討してみますが、調停や裁判で、暴力を振るった側がその事実を認めるというケースは多くありません。相手方が暴力行為の事実を認めないような場合は、それを裏付けるような証拠を提出する必要がでてきます。

診断書典型的なものとしては、医師の書いた診断書となります。例えば、顔を殴られてあざができたような場合は、その原因(暴力)について医師に説明して診断書を書いてもらい、写真で傷害結果がわかるように記録しておくとよいでしょう。

また、暴力行為は、一度だけではなく、繰り返し行われることが多いですから、暴力行為が行われたときは、その日時、場所についてもメモして残しておくと、離婚手続きにおいては有効でしょう。

なお、直接暴力を振るわれた場合のほか、暴言、脅迫等の言葉による暴力の場合も、離婚原因となり得ますので、どのような言葉を発せられたのかについて、日時、場所をメモしておくことは有益です。そのような暴言が、録音されていれば、その証拠としての価値は大きいかもしれませんが、暴言を予測して録音の準備をするのは現実的ではないかもしれません。

離婚原因-性格の不一致

性格の不一致離婚相談にこられる方の多くが、離婚原因として「性格の不一致」を挙げています。しかし、民法上、離婚原因として「性格の不一致」というものが定められている訳ではなく、配偶者による暴力の場合と同様、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」(民法770条1項5号)に該当するか否かという問題となります。

もっとも、夫婦の性格が異なることは、いわば当然のことでもあり、「性格の不一致」というだけで離婚が認められる訳ではありません。性格の不一致が原因となって、婚姻関係が破綻し、もはや修復することが不可能であるという事実が必要となります。少なくとも、性格の不一致の結果、夫婦関係が悪化して別居するに至り、別居期間も相当な期間に達している等の事実が認められる必要があります。

なお、離婚調停や離婚訴訟の場合、「性格の不一致」のみだけでなく、他の理由も併せて主張されるケースが多いと思います。その意味で、婚姻関係が修復不可能であるという事情は、「性格の不一致」だけではなくその他の諸事情を総合的に判断して決せられるものと思われます。

何れにしても、「性格の不一致」を原因とする離婚の可否については、明確な基準がある訳ではありませんので、弁護士に相談の上、その方向性を相談されるのがよろしいかと思います。

離婚原因-熟年離婚

熟年離婚「熟年離婚」という法律用語はないのですが、世間一般では、認知された用語ですので、便宜上「熟年離婚」という用語を使わせていただきます。

法律上の用語ではないため、どのようなケースが熟年離婚なのか明確な区別はできませんが、夫婦の一方が50代以上で、子供も成人していて手がかからなくなっているような夫婦間の離婚であれば、「熟年離婚」と表現してもよいと思います。夫が定年退職している夫婦であれば、明らかに熟年離婚だと言えるでしょう。

熟年離婚の特徴としては、第一に、長年連れ添ってきた夫婦であるだけに、離婚原因がはっきりしないケースが多いということです。もちろん、長年に渡って浮気やDVに悩まされていたものの、子供のために離婚はしないよう耐えてきたというケースもないではありません。

しかし、現在は、例え子供がいた場合でも、離婚を思いとどまるのではなく、早期に離婚に向けて行動を起こす方が圧倒的に多いです。熟年離婚の特徴は、夫と直ぐに離婚するほどの不満はなかったものの、小さな不満が積もり積もって、夫の定年退職後に妻から離婚を切り出されるというケースが多いのです。

熟年離婚の第二の特徴としては、若い夫婦間での離婚と異なり、相当な金額の夫婦共有財産が形成されていることが多いということです。典型的には、退職金の支払いを受けてからの離婚の場合、最大で退職金の半分位は、財産分与として支払いを求められることになります。その他にも、不動産や預貯金等多額の資産を保有している夫婦間での離婚は、財産分与額が多額になるケースが多くなっております。

第三に、上記に関連して、婚姻期間が長い分だけ年金分割によって得られるメリットが、妻にとって大きくなります。逆に言うと、夫は財産分与だけではなく、年金分割によっても多くのものを失うことになります。

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